こんにちは、Dancing Shigekoです!
今回は小説『街に躍ねる』を紹介します!
[基本情報]
著者:川上佐都
出版社:ポプラ社
出版年:2023年
ページ数:238ページ
[登場人物]
晶
小五。本作品の主人公。両親と兄と一緒に生活をしている。
小学生の時というのは、彼のような感じだったろうか?と思い出すきっかけを与えてくれる。
達
高一。晶の兄。訳あって不登校、家で絵を描いて過ごしている。
絵が上手というのが羨ましい。
朝子
晶と達の母親。
のんびりしている印象がある母親。温かく子供達を見守っている印象。
凌平
晶と達の父親。広告制作の会社で働いている。
どんなことがあっても子供の味方というスタンスを見習いたい。
[内容]
ある時から、晶が家に帰ると兄 達が部屋にいた。それ以降、毎日部屋にいる兄に、何をしているのだろうと気になって、帰ると兄の部屋に立ち寄る生活が始まる。
しかし、やがて大家からクレームがあり、晶の兄と母は、秋田へと引っ越していくのだった。
[感想]
達を見守る母と、慕う弟の物語。
二つの章から構成されていて、一章は晶から見た兄 達との生活。二章は母 朝子から見た息子 達の生活。それぞれの視点で描かれているのが特徴。
・不登校の原因
高一の達。人の目を見て話すことが苦手だという。コミュニケーション障害、と診断されたわけではないのだけれど、どうやらそういう扱い。そのため、学校に行っていても揶揄われてばかり。
さらに何かに集中すると突如無意識に走り始める癖がある。そういった独特の雰囲気があって、学校での居心地が悪くなって学校に行かなくなる。
そのことを、母親も弟も詳しく理由を聞こうとしない。そんな様子が描かれる。
晶が学校の友達を連れてきた時に、バッタリと鉢合わせになってしまい、友達の一人からはコミュ障だと言われ始める。お気に入りの女の子 南からは、兄の行動が可愛い小動物みたいと言われて、複雑な気持ちを味わっている。
一日中家にいる達。周りからはどう見えるものなのだろう。今の時代だったら、オンライン授業などもあるし、学校に行くことだけが勉学とは限らないのかもしれない、と思う設定。
・小五の弟にとっての兄
晶にとって6つくらい離れている兄というのはどう見えているのか。小五の時の高一。結構大人のように見えると思う。高一と言えば、それなりに成長しているし、知識量も圧倒的に差がある。いろんなことを知っている兄。
なぜか分からないけれど、一日中家にいて、絵を描いている兄。しかも、実は父親が違うと聞かされたら、どう感じるものなのか。小五でどこまで物事を理解できるのか。
本作品はいかにも小五のような視点で描かれているけれど、実際の心のうちまではどうだろうか。結構、晶はしっかりしているように感じてしまっただけに。図書室にある伝記マンガをほとんど読み終わったという描写と、その中から勉強が大事だから中学受験をしようとするあたりは、かなりしっかり者と感じてしまった。自分にはなかった感覚なだけに、羨ましく感じるし、自分も伝記マンガを読み進めてみようか、と思うきっかけにもなった。
・秋田に向かう
特にすごいと思ったのは兄が秋田に引っ越してしまい、時間が経ってから、一人で会いにいくと言い出すあたり。てっきり父親に連れて行ってもらうのかと思ったら、新幹線に一人で乗り込んで秋田まで向かっている。東京あたりに住んでいそうな晶が一人で秋田まで行く。
かなりしっかりしている。それこそ小五で一人で新幹線に乗ったら、どんな風に世界が見えるのか。周りは大人ばかりだろうし、見ず知らずの土地だろうし、本当に正しい場所についているのだろうかって思ってしまいそう。
小学生の頃に一人で見ず知らずの土地に遠出していたなら、どんな思いだっただろうか。
・息子の心のうちを探る
逆に母親の方はどう感じているのか。その描写が興味深い。あまり深く聴かないようにしつつ、行動から、何を考えているのかを分かるように心がけている。最低限、達が喜んでいるのか、嫌がっているのか、位は分かるように心がけようとしている。
もし自分の子供がコミュニケーション障害(?という病名なのかわからないけれど)になったなら、あるいは不登校になったなら、どうするだろうか。その理由を根掘り葉掘り聞き出そうとしてしまわないだろうか。それとも行きたくなかったら行かなくていいと言うのだろうか。
この作品では、どちらでもなく、静かに見守る。話したくなったら、自分から話してくれるだろうと待っている。そう言うスタンス。このような接し方もアリなのかな、と思う展開だった。
自分だったら、どうするだろうか、自分の時はどう思っていただろうか、など両方の感覚を味わうことができる作品だった。
読了日:2023年8月14日
皆様の感想もぜひお聞かせください!
それでは、また次回!
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