
こんにちは、Dancing Shigekoです!
今日は最高の桜日和でした。
[基本情報]
著者: 東野圭吾
出版社: 株式会社KADOKAWA
出版年: 2018年
ページ数: 316ページ
[登場人物]
工藤ナユタ:
鍼灸師。高齢の師匠から引継ぎ鍼を打つようになった顧客からの相談に乗って、困りごとを解消するきっかけを作り出す。彼自身にも触れられたくない過去があるが、ある事件解決を機に向き合う。
鍼灸師(しんきゅうし)と言う職業が中心人物の作品を読むのは、初。固定の顧客がいて、全国に出向いていくと言う仕事の仕方を知ることができたのは発見。彼自身の過去の出来事は、”ラプラスの魔女”でも触れられていたのか、その部分が気になりました。
羽原円華:
開明大学医学部脳神経外科の羽原教授の娘。スキージャンプの選手 坂屋の研究をしていると言う北陵大学 筒井准教授を通じて、ナユタとも知り合う。その出会いをきっかけにナユタの顧客の困りごとを解決するために協力。不思議な力を発揮して、次々と解決していく。
『ラプラスの魔女』でも登場した彼女。今回はその特殊な計算力を使って、スキージャンプを成功に導いたり、ナックルボールを取ったりして、相手の心を動かす。その予測能力の凄さは健在で、こう言う力を持つことができたら、世界の見え方はきっと違うのだろうと想像が膨らむ。
[内容]
第一章 あの風に向かって翔べ
ナユタの顧客 坂屋はスキージャンプの往年のスター。調子を落としていて、次の大会で結果が出なかったら引退しようと考えていた。その彼の様子を見た円華は、私の合図でジャンプをしたら、勝つことができると提案するのだが、坂屋は聞き入れないのだった。
第二章 この手で魔球を
ナックルボーラーの石黒の女房役であるキャッチャー 三浦は自分の膝の調子のことを考えて、引退するつもりでいた。その前に、石黒のナックルボールを受けることのできるキャッチャーを育てようと、密かに自分のことを慕ってくれていた後輩 山東を指名。初期の頃は普通に石黒のナックルを捕球できていたが、ある試合のエラーがきっかけで、以後、捕球ができなくなってしまっていた。そんな悩みを聞かされたナユタは、円華の力を借りて、山東を立ち直らせる作戦をとるのだった。
第三章 その流れの行方は
ナユタは高校時代のクラスメイト 脇谷と再会する。脇谷は彼らの恩師 石部教諭が休職している聞いてなんとかしたいと思っていた。休職の原因は息子の湊斗が事故で植物状態になってしまったことがきっかけだと言うことだった。なんとか石部に会いたいと思っていた脇谷は、入院中の石部湊斗に付き添っている奥さんから話を聞き出そうと考える。湊斗が入院している病院が開明大学と聞き、ナユタは円華に協力を仰ぐのだった。
第四章 どの道で迷っていようとも
盲目のピアニスト 朝比奈一成は、彼の世話役だった奥村が亡くなったことがきっかけで作曲を辞めてしまっていた。ナユタは朝比奈の話は聞いても、それ以上のことをすることは考えていなかった。ところが、円華が朝比奈の曲には、父 羽原が施す手術 羽原手法に不思議な効果があるから、新しい曲を作曲できるように元気になってもらいたいと言い出し、ナユタは一緒に調査に乗り出す。しかし、円華の狙いは別のところにあるのだった。
第五章 魔力の胎動
大鵬大学の青江は、赤熊温泉で発生した硫化水素の事件調査への協力を要請される。その現場に向かう途中、3年前に関わった灰堀温泉での硫化水素の一家3名の中毒死事故の原因調査のことを思い出していた。
[感想]
全5話から構成される作品。
それぞれ1話完結でいながら、時系列としては繋がっていて、一つの出来事が次の話の時にも触れられる構成。
第一章から第四章までは工藤ナユタと羽原円華が中心。ナユタの顧客と接点を持つことになった円華が気になって彼らの悩み事を解決する手伝いをする。
風の動きを的確に読み、ジャンプを成功に導いて見せたり、予測が難しいナックルボールの変化を的確に予測してキャッチして見せたり、川に溺れた少年を仮に助けに行っていたらどうなっていたかを見せてみたりと。どれもが科学だと言って何事もなかったかのように当たり前に予測して解決していく円華の力が圧巻。ラプラスの魔女では、やや不気味な感じの円華だったが、今回は、お節介な性格と言った印象を与える。
とことん円華の凄さを見せた後に、”ラプラスの魔女”でも登場した青江が最後の第五章で登場。ここでは円華は登場せず、青江が調査を通じて、事故の真相を見極めていくと言うもの。大学の教授ってこんなにも推理力にも長けているものなのだろうかって疑問を抱いてしまいたくなるほど、見事に事故の真相を解明していく様子が描かれる。その青江が今度は赤熊温泉の事故調査に乗り出すところで物語は終わる。その時に見かけたフード付きの男が、『ラプラスの魔女』の甘粕謙人なのだと言うことを想像をさせて終わって行くところが、実に憎い演出。
読了日:21年3月26日
皆様の感想もぜひお聞かせください!
それでは、また明日!
Comments